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調査分析
1. 景況状況について
(1)奥尻町の景況状況について北海道の状況と比較
初めに、今回、アンケート調査を行った奥尻町における景況状況を北海道全体の景況状況を比較することによって、景況状況が客観的にどのような状態であるのかを分析する。比較対象は、北海道商工会議所連合会が実施する『中小企業景況調査報告書(平成
28 年 10〜12 月期実績)』とする。
比較においてはD・Iを使用する。D・Iとは、ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index) の略であり、各調査項目についての好転割合から悪化割合を差引いた値(景気動向指数)である。
前述した『図表7 D・I(現在)』について主要指標のみを抽出したものが図表22である。
図表22 D・I(一部抽出)
図表22の奥尻町の事業所のD・Iと『中小企業景況調査報告書(平成 28 年 10〜12 月期実績)』の同
様の項目を比較すると図表23のとおりとなる。
図表23 D・I比較
※良い数値を青字、悪い数値を赤字とする
<分析結果>
奥尻町の事業者の景況状況は、「売上高」「経常利益」「資金繰り」の全てにおいてD・I値がマイナス数値となっており、厳しい景況状況にあることがわかる。
また、北海道全体の景況状況と比べると、「売上高」「経常利益」「資金繰り」のすべての指標が悪い数値となっており、道内において悪い景況状況であることがわかる。
D・I値から「売上高」の悪化が足を引っ張り「経常利益」が減少していることが読み取れる。「経常利益」が悪化した結果、資金調達が困難になり、「資金繰り」にまで影響がでている。
2. 業種ごとの経営状況
次に業種ごとの経営状況を分析する。ここでは「製造業」「建設業・運輸業」「卸売業・小売業」「飲食業・宿泊業・サービス業等」の4区分で分析を行う。
各区分のアンケート回答数は下図のとおりである。
図表24 業種(中分類)(再掲)
それでは次のページ以降において、上記4区分の景況状況、経営課題をみていく。具体的な分析項目は以下のとおりである。
[業種ごとの景況状況]
北海道商工会議所連合会『中小企業景況調査報告書(平成 28 年 10〜12 月期実績)』の業種ごとの分
析結果と、本アンケートの結果を比較し、奥尻町の事業所の景況状況を業種ごとに分析する。
[経営課題]
本アンケートで集計した経営上の問題点を業種ごとに分析し、業種ごとの経営課題を抽出する。
(1)製造業(n=7)
奥尻町のなかで最も景況状況が悪い業種である。販売数量が減少した結果、売上高が確保できずに利益にも影響がでている。
図表25 D・I(製造業)
※北海道の数値:北海道商工会議所連合会『中小企業景況調査報告書(平成 28 年 10〜12 月期実績)』
有効回答アンケートは7。多くの事業者が「売上(受注)不振」「原材料(仕入)価格の上昇」を経営上の問題点にあげている。また、「販売(出荷)価格の低迷」が3番目に多く、販売面に課題が多いことがわかる。
図表26 経営上の問題点(上位3つ)
図表27 現在の経営上の問題点
(2)建設業・運輸業(n=13)
北海道全体をみると建設業・運輸業が最も景況状況が良い業種である。一方、奥尻町の建設業・運輸業の景況状況は良いとはいえない。受注件数の低下や仕入単価の高騰により利益の確保が難しい状況である。そのなかで資金繰りについては踏ん張っており、企業努力の結果が伺える。
図表28 D・I(建設業・運輸業)
有効回答アンケートは11。9割の事業所が「売上(受注)不振」を経営上の問題点としている。また、「諸経費(物流、物件費等)の上昇)」も高い割合を占めており、利益の確保が難しい状況が伺える。
図表29 経営上の問題点(上位3つ)
図表30 現在の経営上の問題点
(3)卸売業・小売業(n=18)
すべての業種のなかで資金繰りD・Iが最も悪い。企業は資金が回れば事業継続が可能であるが、資金がショートすれば事業継続が不能となる。これを踏まえると、卸売業・小売業が最も厳しい状況にあるといえる。
図表31 D・I(卸売業・小売業)
有効回答アンケートは17。「売上(受注)不振」の回答割合は奥尻町全体と変わらないが、2番目に「顧客・消費者ニーズの変化」があがっている。消費の多様化により、消費者が求める商品が変わってきており、この環境に適応するのが課題であることが読み取れる。
図表32 経営上の問題点(上位3つ)
図表33 現在の経営上の問題点
(4)飲食業・宿泊業・サービス業等(n=28)
飲食業・宿泊業・サービス業等は、北海道全体の景況状況と大きく乖離していない状況にあるといえ
る。また、奥尻町のなかで最も景況状況が良い。「仕入単価(人件費単価)」の高騰が影響しており、利
益の確保が若干難しくなっているといえる。
図表34 D・I(飲食業・サービス業等)
有効回答アンケートは23。他業種と異なり、「原材料(仕入)価格の上昇」がもっとも大きな経営上
の問題点となっている。また、3番目の問題点に「後継者問題」があがっているのが特徴である。
図表35 経営上の問題点(上位3つ)
図表36 現在の経営上の問題点
3. その他の項目について業種ごとに分析
(1)雇用状況
@人員の充足割合
図表37 人員の充足度(業種別)を示す。
建設業・運輸業において「不足」の割合が10%を超えており、若干人員不足である状況が読み取れる。
図表37 人員の充足度(業種別)
A今後の採用状況
図表38 今後の採用予定(業種別)を示す。
建設業・運輸業において「採用したい」の割合が約30%と高い数値を示している。
図表38 今後の採用予定(業種別)
(2)事業の継続・廃業予定割合
図表39 事業の継続・廃業予定割合(業種別)を示す。
製造業の「廃業予定」の割合が83.3%と特に高い数値を示している。
図表39 事業の継続・廃業予定割合(業種別)
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